大切な人の蘇生処置に立ち会いたいか

医療系ドラマでよく見るあのシーン。

患者さんが心肺停止状態で救急車で運ばれてきて、病院についたとたん、

「ご家族はこちらへ!」

殺風景な部屋へ通される。そしてわけも分からない状態のままひたすら待たされる。廊下でうなだれるシーンなんかもよく見かけます。

そして最後には、「最善は尽くしましたが、、、」

 

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救急の病院実習をさせていただいて、蘇生処置への家族の立ち合いについて議論がなされているということを知りました。

 

蘇生処置時の家族立ち合いはイメージができなかったので予想はしていましたが、想像以上に日本では検討されていないように感じてしまいました。

現に、病院におけるマニュアル作成は1割に満たないとのことでした。

 

家族が蘇生処置に立ち会うことにどのようなメリット・デメリットがあるのか。山勢教授らの研究によると、

メリット:家族が今どのような状況なのかを理解できる、医療者が全力を尽くしていることを理解してもらえる、家族が最期まで一緒にいられるなど

デメリット:家族が精神的ショックを受ける、医療スタッフを増やす必要があるなど

といったことが挙げられていました。

海外では、立ち合いによって家族の心的外傷後ストレス障害PTSD)の発症が有意に改善されたとの研究結果がでています。

 

メリット・デメリットは必ずしもすべての人に当てはまるわけではないですし、メリットをより感じる方もいれば、その逆の方もいるでしょう。

 

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私は蘇生処置に家族が必ず立ち会うべきだとは思いません。

蘇生処置を受けるという深刻な状況の中で家族は、医療者や現場の雰囲気からもしかしたら自分の大切な人は死ぬのかもしれないと悟るようです。そのとき、家族も危機的な精神状態に陥っています。

 

大切な人との別れは精神的ショックがあまりに大きく、心の準備もままならない状態ならばなおさら、側でその人の死を受け止めることなどできない方もいると思います。

それに、たくさんのチューブや医療機器に繋がれた患者さんを見ているだけでも、想像以上につらいと感じる方が多いのではないでしょうか。

 

ただ、死を迎えるその人が危機的状況をどのように生きていたのか、そして最期の時まで懸命に生きる姿を、希望するならば家族は見届ける権利があるのではないかと思いました。

 

また、もし私が患者側でそれが最期の時間になるならば、家族に側にいてほしいと思うような気がします。蘇生できなくても、自分が最期まで生きる姿はきっと、残された人たちがそれからを生きていくことを後押ししてくれるのではと思います。時間がかかっても、きっといつかは、、、

 

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家族の蘇生処置立ち合いが実現されるには、病院側の様々な準備も必要です。

今後体制が整われ、家族側に立ち合いの選択権が確実に渡るようになれば、私たちは大切な人との突然の別れとより最善の状態で向き合うことができるのかもしれません。

 

大切な人との別れは、人生の中で何度も経験しなければならないことだから。

だからこそ、もっと身近に感じて考えていけたらなと思いました。

 

 

 

*参考文献

・心肺蘇生処置中の家族の立ち会いに関する現状 および医療従事者の意識と家族の思い

 研究代表者:山勢博彰(山口大学大学院医学系研究科・教授)

 http://www.fasd.or.jp/tyousa/pdf/19yamaguchi.pdf

・N 病院における心肺蘇生処置中の 家族の立会いに関する医療従事者の意識と課題

 服部裕子、藤本華織、松和代(徳島赤十字病院看護部)

 http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/hospital/medical/2015_full026.pdf

・心肺蘇生への立ち会い、家族のPTSDを抑制/NEJM

 https://www.carenet.com/news/journal/carenet/34069